あるSNSに書き込んだ(2008年1月6日)ものですが、そちらを退会したので、心覚えのために転載しました。
***
昨年は、国会がいわゆる「ねじれ」状態になって内閣もかわり、経済面では米国のサブプライムローンの破たんに端を発した信用収縮、投機マネーの流入による天然資源の価格高騰など、いろいろなことがあった。 じぶんにとっても仕事がかわってリスクマネジメント、コンプライアンス、内部統制といった少々目新しくも聞こえる分野に携わるようになり、変化を体感した一年であった。
個人的には、NOVAの破たんが痛かった。VOICEというチャットルームの回数券が相当の枚数、残っていたためである。ただし、新生NOVAで75%ディスカウントという大盤振る舞いで新たに契約ができるらしい。もったいないから、気を取り直して春になったら、少し英語の勉強もしようか。
NOVAが顧客との間の払い戻しのトラブルで係争になったころから、危ないなぁと思い始めた。店頭公開していたので、9月末だったかのバランスシートをWebで見ることができたが驚いた。顧客から前払いでもらっていた授業料が200億円以上の負債になっていたのと同時に株主資本は、わずか3億円くらいしかなく、債務超過寸前だったからである。(後から、どうやら、それも粉飾決算だったらしいということがわかったが。) これでは無事に年を越せまいと思っていたら案の定の破たん劇であった。
直接的な原因は、コンプライアンス違反にも聞こえた前払い授業料の払い戻しトラブルによる顧客離れであった。これには、特定商取引法上、問題があるという見解も出てきたが、支払った授業料の全額が戻ってこないことは契約時に説明を受けていることでもあり、それ自体を不適法として問責できるとは思いもよらなかった。よって、購入したVOICEチケットについても、防衛策は取らずにいたしだい。
だが、そもそも、そうした顧客とのトラブルがどうして頻発したのか。おそらく国から受講者がもらえる教育補助の金額が段階的に削減されて来たために、受講者が伸びなくなったのではないだろうか。それを無理に無理を重ねて、受講者に消化しきれないほどのレッスンを契約させ、トラブルの火種を抱えたということではないか、と思われる。
国から補助が出るところにはビジネスが新規に参入してくるが、補助が細くなった途端に窮地に陥るケースがあるようだ。教育業界では、米国公認会計士受験の予備校大手だったANJOが、やはり、国からの補助の削減とともに破たんした。コムスンで注目された介護ビジネスも、国などからの補助が誘い水ともなり、コンプライアンス違反の契機ともなったようである。
NOVAとANJOには、ほかに二つの共通点があるように思われる。どちらも「成長志向」だったことと、創業者にしっかりした企業での勤務経験が乏しかったらしいことである。企業が成長を志向するのは悪いことではない。国民経済の成長は、ミクロレベルで個々の企業が成長しないことには実現できはしない。ただ、成長が企業の問題のすべてを解決すると考えることは愚かであろう。
たしかに成長は、それができれば、多くの弱点、欠点を補ってくれる。ただし、成長できるためには、致命的な弱点、欠点があってはならない。NOVAの場合は、創業時の経験から、成長がすべての問題を解決するという信念が創業者の心中に固く形成された節が見受けられる。
だが、成長第一とばかりに前払いを受けた受講料のほとんどを新規教室や、広告宣伝の投資に回したのでは、仮に100%の市場シェアを取れたとしても破たんは免れない。マーケティングやビジネスモデルは間違っていなかったかも知れないが、お金の使い方という経営の基本ができていなかったことになる。この点、ANJOもよく似ているようだ。
創業者がしっかりした組織で勤務した経験に乏しいらしいことを、もう一つの共通点として考えているが、これは不幸な場合、ガバナンス、コンプライアンス、内部統制の弱さに直結してしまう。 やはり創業者には、幹部とてなかなかモノ申せないはずである。そこで創業者自身にガバナンスと内部統制の仕組みに対する意識や、コンプライアンスの重要性に関する認識がどの程度あるかが非常に重要になると思われる。
その点で、創業者が過去にしっかりした組織で勤務した経験があるかどうか、がひとつのリスク要因として重要になってくると思われる。個人的な資質も重要だが、そうした経験も重要であろう。ANJOは失敗したが、同業ライバルのU.S.エデュケーション・ネットワークは堅実に経営をしてきているようである。創業者は、ユニデンに勤務していたことがあったと記憶する。この点は、ライブドアと楽天の対比にもあてはまるのではないだろうか。
アントレプレナーシップは重要であるが、陥穽にも留意すべきだと思われる。NOVAの破たんで思ったことは、以上のように、国からの補助への依存はアントレプレナーシップに値しないし、それ自体、リスクを抱えているのではないか、ということ。成長が正しい戦略に則っていない可能性に留意すべきこと。経営者のコンプライアンス意識が重要なこと、である。ライブドアについては、あらためて、考えをまとめたい。
最近のコメント