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【一橋大学公開講座】「日本企業の組織問題」

 「日本企業の経営課題」の第二講目は、沼上幹教授による「日本企業の組織問題」と題され、興味深い実証研究の結果も紹介されながらの面白い講義であった。

 少なくとも今日の日本企業には過剰な民主化によって責任者が不在の様相を呈し、事業部長クラスにリーダーシップが欠如しているという問題が見られるとした上で、いくつかの要因によって、複雑化したルールのもと、内向の仕事に精を出し、社内の調整に時間を要するような「重い」かつ「遅い」組織になりがちであることが説明された。

 そして、20社以上の企業の協力を得て、そのような組織の「重さ」を計量化し、「重い組織」と「軽い組織」を対比して統計をとった結果、導き出された知見を披露していただいた。この実証研究は文科省からの補助を得た21世紀COEプログラムの一環であるそうだが、パフォーマンスの良い「軽い」組織というのは(私にとって)意外なことに、有機的な組織と機械的な組織の二つの面を併せ持っていることがわかったそうである。

 手元の”Understanding and managing Organizational Behavior”というアメリカのMBA教科書によると、有機的組織とは「従業員が変化を起こし、条件の変化に速やかに適応できるような柔軟性を促進するように設計された組織構造(An organizational structure designed to promote flexibility so that employees can initiate change and adapt quickly to changing condition)」で、他方の機械的組織とは、「従業員をして予見でき、結果を説明しうるような仕方で行動せしめるよう設計された組織構造(An organizational structure designed to induce employees to behave in predictable, accountable ways)」とある。

 教科書の定義は、contingency theoryの視点からのものであるが、沼上教授の整理によれば有機的組織はいわば参加型で、フラット&エンパワメントという特徴があり、機械的組織とはタテの影響力の強い組織構造で官僚制・フォーマルなタテの関係という特徴があるということで、対立する概念であるのに、「軽い」良い組織には両方の面が見られるというのは意外かつ興味をひく実証結果である。

 当然ながらイノベーションを導くような戦略創発には有機的組織が適しているのだが、この実証研究の知見として、組織の「重さ」はその規模と(従業員の)平均年齢とに正の相関があったそうである。沼上教授によれば、有機的組織といえども成功して規模が大きくなるとともに「重い組織」あるいは「弛んだ共同体」になってしまう可能性があり、「軽さ」を維持できている良い組織は、その弊害をフォーマルなタテの関係で律して相殺していると思われる由である。

 今日の講義におけるメッセージは、従来、日本企業は組織の規模が大きくなることは、事業が成功した結果なのだから良いことだと受け止めてきたが、実は規模が大きくなることにはリスクがあることをもっと認識すべきだということと理解した。日本企業はアメリカの企業と比較しても事業部長(職)をあまりつくらないのだが、100人~150人、売り上げでいえば年商100億円~150億円に達したビジネスは、事業部として分化させたほうが良いとのことであった。

 90ページのパワーポイントによる二時間の講義で途中、説明を端折ったところもあったが、日本の企業や組織の中で起こっていることについて、ユーモアたっぷりの解説が織り込まれ、聴いていて実に面白かった。

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